• HOME
  • NEWS LIST
  • Movie , Review
  • 隣の映画観|映画評|映画『エブリバディ・ウォンツ・サム!!世界はボクらの手の中に』(岡山和正)

隣の映画観|映画評|映画『エブリバディ・ウォンツ・サム!!世界はボクらの手の中に』(岡山和正)

©2015 PARAMOUNT PICTURES

どの時間を切り取ってもむちゃくちゃで、面白く、美しい―

私を映画『Everybody Wants Some!!』(邦題:エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に)の時代と世界観にスッと入り込ませたのは、オープニングの挿入歌 『My Sharona』 (The Knack(ザ・ナック))だった。

 

作品に使用されている名曲は、作品の舞台となっている年代や地域、監督・脚本家と楽曲との関わりや思い出、さらには受け手と楽曲との関わりに依拠する。私にとって『My Sharona』 (The Knack(ザ・ナック)は、これから始まる作品への期待と高揚感を演出する楽曲であると同時に、日本の某人気バラエティ番組のテーマソングのイメージが強く、本能的に本作に対しても「これから面白い人たちが登場し、面白いストーリーが始まる」と想像してしまった。

その期待は、個性豊かな登場人物たちのおかげで、程なくして叶えられることになる。時折、軽いノリの登場人物が発する真剣な言葉とのギャップ、体育会系の突き抜けたバカが暴れる。登場人物一人ひとりの個性が鮮やかに描写されている。

©2015 PARAMOUNT PICTURES

©2015 PARAMOUNT PICTURES

一人ひとりが特徴的で個性豊かな登場人物とともに、作品の舞台となっている1980年(1970年代後半から1980年代)の名曲が作品を彩る。みんなで『Rapper’s Delight(ラッパーズ・ディライト)』(The SugarHill Gang(シュガーヒル・ギャング))を歌うシーンは、本作を象徴するシーンと言っても良いだろう。音楽は、世界を越え、先輩後輩の関係さえもなくしてしまう。『Rapper’s Delight(ラッパーズ・ディライト)』(The SugarHill Gang)シュガーヒル・ギャング))は、ギタリスト/コンポーザー/プロデューサーのNile Rodgers(ナイル・ロジャーズ)率いるCHIC(シック)のヒット曲『Good Times』(グッド・タイムス)をサンプリングして制作されたことは有名で、ダンス(ディスコ)・ミュージックが、Hip Hopの最初のヒット曲に多大な影響を与えたというのも当時の音楽シーンや流れを象徴している。ほかにも『Let’s Get Serious(レッツ・ゲット・シリアス)』(Jermaine Jackson(ジャーメイン・ジャクソン))や『Because The Night(ビコーズ・ザ・ナイト)』(Patti Smith Group(パティ・スミス))、『Take Your Time(テイク・ユア・タイム)』(THE S.O.S BAND(S.O.Sバンド))など、名曲がふんだんに使用されていることからも、タイムスリップした気分を味わえるが、Richard Linklater(リチャード・リンクレイター)監督にとっては、この名曲たちも青春そのもの。Richard Linklater(リチャード・リンクレイター)監督が、学生時代に当時のヒット曲を録音したカセットテープをいまでも所有し、その中から選曲したそうだ。そんな名曲たちは、いまでも新鮮で、古臭さがないことに驚こう。因みに、本作のサウンドトラックは、カセットテープで販売されており、日本国では唯一東京・中目黒にある「walts」で販売されているとのこと。

当時のファッションや風景を忠実に再現、名曲を使用することによって、時代・時間とその流れが忠実に、大切に、ノスタルジックに描かれている。それは、Richard Linklater(リチャード・リンクレイター)監督が、常に確かなリアルさや時代・時間とその流れを大切にしてきたことが、映画『Boyhood』(邦題:6才のボクが、大人になるまで。)や映画『Dazed and Confused』(邦題:バッド・チューニング)の撮影方法や内容からも見てわかり、本作でも同じである。

©2015 PARAMOUNT PICTURES

©2015 PARAMOUNT PICTURES

主人公のブレイク・ジェナー(通称:ジェイク)をはじめとする登場人物たちのわずか3日間という人生のほんの一部を垣間見ているだけなのに、まるで自分が夏休みを謳歌したかのような気分、錯覚に陥った。ジェイクは、Richard Linklater(リチャード・リンクレイター)監督そのもので、個人的な人生の一部を描写していることから響いてくる。

Richard Linklater(リチャード・リンクレイター)監督は、2014年の映画賞を総なめにした映画『Boyhood』(邦題:6才のボクが、大人になるまで。)で12年間に渡って断続的に撮影を行った。12年間もかけて作品を作っていたのだ。体も心も休まるときがなかっただろう。私が本作で「夏休み」を感じたように、Richard Linklater(リチャード・リンクレイター)監督にとって、まさに12年の撮影からの束の間の「夏休み」、そして、俳優やスタッフたちと一緒に、また新たな青春の1ページを作る大事な時間になったのではないかと思う。

 

若さや青春とは痛快で、どの時間を切り取ってもむちゃくちゃで、面白く、美しい―まさにこの作品のことである。

Everybody Wants Some!!
エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中

”少年と家族の12年間”に続いて描くのは、大学直前の3日間。

少しだけ大人になった“ボク”に、永遠には続かないけど、最高の時間がやってくる!

6才の少年が成長する12年間を描いた『6才のボクが、大人になるまで。』で2014年の映画賞を総なめにし、映画ファンを熱狂させたリチャード・リンクレイター監督の最新作。本作は、リンクレイター監督が、「あの12年間の続きになるような、大人の扉を開けるひと時を描いている。」と語る、『6才のボクが、大人になるまで。』の続編ともいえる青春映画。

1980年夏、野球推薦で大学に入学することになった主人公・ジェイク(ブレイク・ジェナー)が、個性豊かで騒々しいチームメイトたちと野球はもちろん、女の子、お気に入りの曲、パーティ、お下劣なジョーク…あらゆることに全力で打ち込み、新たな出会いと成長、そして恋を経験。少しだけ大人になった”ボク”が過ごす新学期が始まる直前の3日間を、今までのリンクレイター監督作品同様、永遠には続かない、しかし決して色褪せることのない青春の輝きとして生き生きと描く。

  • 公開: 2016年11月 新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー
  • 監督・脚本: Richard Linklater(リチャード・リンクレイター)
  • プロデューサー: Megan Ellison(ミーガン・エリソン)、Ginger Sledge(ジンジャー・スレッジ)、Richard Linklater(リチャード・リンクレイター)
  • 撮影: Shane F. Kelly(シェーン・F・ケリー)
  • 編集: Sandra Adair(サンドラ・エイデアー)
  • 出演: Brake Jenner(ブレイク・ジェナー)、Zoey Deutch(ゾーイ・ドゥイッチ)、Ryan Guzman(ライアン・グスマン)、Tyler Hoechlin(タイラー・ホークリン)、Glen Powell(グレン・パウエル)、Austin Amelio(オースティン・アメリオ)、ほか
  • 配給・宣伝: ファントム・フィルム
  • 宣伝: アンプラグド

Everybody Wants Some!!
エブリ・バディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に
http://everybodywantssome.jp

文: 岡山 和正


緩んだ気持ちで映画を観よう、準備なんて何もいらない。―

まず、私は、映画評論家でも優秀なライターでもなく、不登校問題の解決や対人関係改善に奮闘している心理カウンセラー。

同じ映画を観ても感じ方は人それぞれ、映画は親子にも夫婦にも、そして、クライエントとカウンセラーとの間にも刺激と話題、そして、いま自分自身と相手がどの場所にいるかを教えてくれる。

映画を観る上で、前提となる知識があるほうが面白いという方もいるだろう。確かに、それは正しい。映画に限らず多くのことは知識があるほうが深く楽しめる。ただ、それは作品を「どのように見るか」を先に決めてしまう「先入観」ともなり兼ねない。等身大の自分にとって、その作品が「どのように見えたか」・・・作品が私たちのいまいる場所を示してくれるはずだ。

緩んだ気持ちで映画を観よう、準備なんて何もいらない。

岡山 和正 (おかやま・かずまさ)

ライター/心理カウンセラー。SOUL SAPIENS(ソウル・サピエンス)の映画評「隣の映画観」を連載、心理カウンセラーの視点と新しい切り口から映画作品を分析。カウンセリングにも映画に関する話題を活用している。また、普段から不登校問題の解決や対人関係の改善を中心に幅広い問題や課題の解決に奮闘。日本国ではまだ馴染みが薄いカウンセリングやカウンセラーではあるが、Health(健康)とMental Health(精神的健康)を重要視する海外のように、対人関係や職場環境等の問題を抱える日本国内でも学校や職場におけるカウンセリングを日常化するために挑戦している。情勢や歴史、精神論にも造詣が深い。

©2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

   
error: