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隣の映画観|映画評|映画『バーニング・オーシャン』(岡山和正)

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一度はこの映画を経験するべきだ―

※注意: この記事には、作品のネタバレになる文章や表現があります。まだ作品をご覧になっていない方は、ご注意ください。

 

今回は、映画『Deepwater Horizon』(邦題:バーニング・オーシャン)を観て、私が“経験”したことを書き綴ろう。

メキシコ湾岸原油流出事故が起こったのは、2010年4月20日。日本での公開日は、それから7年後の2017年4月21日(金曜日)、もう7年も経っているし、まだ7年しか経っていない、どう捉えるべきなのだろうか・・・。

暗い画面に音声のみ、法廷でのやり取りから映像が始まり、石油掘削現場の暗い海へと画面は移っていく。実際に起こったメキシコ湾岸原油流出事故を基にした映画の始まりは、これから起こることの凄惨さを物語るには十分といえる演出だった。そして、画面は明るく一変し、主人公のMike Williams(マイク・ウィリアムズ)が、奥さんとベッドで横たわっているシーンから始まる。朝は、これから何かが起こることを示唆する表現描写でもあり、物語全ての始まりを意味する。いつもと変わらない明るい朝にも関わらず、これから何かが起こることを家にあるものや機械の故障などで感じさせる。その描写のおかげか、明るい朝の日差しも、どんな冗談も、観客への緊張感を切らすことはない。それでも私はこれから起こる事故が、どのくらい壮絶なものなのか半分も想像することすらできていなかった。緊張感を切らすことはないと書いたが、明るい 世界に完全に油断し、最初の暗い始まりからは目を背けていた自分がいる。“喉元過ぎれば熱さを忘れる”というが、辛かった開始直後のことはもうすっかりと忘れていた。

メキシコ湾岸原油流出事故が起こる現場、海に浮かぶ石油発掘施設「Deepwater Horizon」(ディープウォーター・ホライゾン)へと舞台が移っていく。この作品は、非常に丁寧に、どのようにして問題が起こったのか、もしこの事故を起きなかったとしたらどこで立ち止まれば良かったのかということも我々に考えさせてくれる。

メキシコ湾岸原油流出事故が起こるまでのシーン、これは人間のパートである。様々な人間模様、上層部の判断と現場の認識の違い、こうした問題は我々にとっても身近であり、どうすれば良かったのかと考えながら観ることもできる。しかし、ひとたび事故が起こってしまえば、人間の無力さを目の当たりにし続けなければならない。事故のシーンは、ただただ辛い。

映画『Deepwater Horizon』(邦題:バーニング・オーシャン)は、全体を通して観客に経験をしてもらうという目的も含めて作られている。いままで多くの映画作品を観てきたが、宇宙船が爆発したり、戦艦が沈没したりしても、客観的にこれは違う世界で起こっていることなのだと頭のどこかで思い、それは映画を「観た」という表現になるだろう。しかし、映画『Deepwater Horizon』(邦題:バーニング・オーシャン) 、正確に言えば、メキシコ湾岸原油流出事故のシーンを「観た」のではなく、確かに「経験」していた。観終わってもすぐに立つことはもちろん、動くことさえできなかったくらいに・・・。私には恐怖を感じたときに、頭で考え、合理的に対処しようとする癖がある。しかし、私の考えなど、一つも役に立たない爆発や倒壊を目の当たりにすると、為す術もなくそこに固まるだけ。もし、あの場にいたら、おそらく生き残れないだろう。人間は、恐怖を感じたときに、そのことを忘れようとする性質がある。まるで本当にその現場にいるかのように映画を通して経験をした私は、この映画を本能的に忘れようとしたのかもしれない。映画『Deepwater Horizon』(邦題:バーニング・オーシャン)については、落ち着くまで書くことができなかった。決してサボっていたわけではない、心が平穏を保つためにこの出来事を忘れさせようとしたのだ。

 

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映画『Deepwater Horizon』(邦題:バーニング・オーシャン)という邦題、そして、俳優のKurt Russell(カート・ラッセル)の出演、これには、奇妙な爆発事件とBackdraft(バックドラフト)という現象と対峙する消防士たちの姿を描いた1991年公開の映画『Backdraft』(邦題:バックドラフト)を誰もが思い出すだろう。映画『Backdraft』(邦題:バックドラフト)は人間の陰謀についても描かれており、映画『Deepwater Horizon』(邦題:バーニング・オーシャン)もそのような腹積もりで観賞しようとしていた。そうした油断の構図を、見事に客席に座りながら経験することになった。ひとたび大事故が発生したときにあなたはいったいどうのように考えるのか・・・どのように行動するのか・・・と、観客一人ひとりに問いかけてくる。

映画『Deepwater Horizon』(邦題:バーニング・オーシャン)については、私は繰り返し何度も観ることができないだろう。目を背けたくなる光景、そして、現実がスクリーンに何度も映し出されるからだ。それでも誰もが一度は観るべき映画、経験すべき映画だと言っておきたい。

災害や事故は、忘れた頃にやってくる。どんなに辛くとも定期的にこの映画での“経験”を思い出さなくてはならないだろう。事故はいつだって我々のすぐ隣にあるのだから。

Deepwater Horizon
バーニング・オーシャン

トランスオーシャン社の電気技師マイクが愛する妻子とのしばしの別れを惜しみながら、メキシコ湾沖の石油掘削施設ディープウォーター・ホライゾンに赴いた。ところがマイクの上司で施設主任のジミーと、雇い主であるBP社の管理職社員ヴィドリンが激しく対立。ヴィドリンは工期の遅れを取り戻すため、重要な安全確認テストの省略をもくろんでいた。ヴィドリンが強硬に押しきる形で掘削作業の最終段階を迎えるが、その夜、大量の原油が漏れ出す緊急事態が発生。ついには施設全体に噴出したガスや油がエンジン室に引火し、取り返しのつかない大爆発が起こってしまう。瓦礫の山から這い出したマイクは、重傷を負って身動きがとれない仲間たちを必死に救おうとするが、すでに無残に崩れゆくディープウォーター・ホライゾンの周りには火の海が広がっていた……。

  • 公開: 2017年4月21日(金曜日) 全国ロードショー
  • 監督: Peter Berg(ピーター・バーグ)
  • 原案: Matthew Sand(マシュー・サンド)
  • 脚本: Matthew Sand(マシュー・サンド)、Matthew Michael Carnahan(マシュー・マイケル・カナハーン)
  • 出演: Mark Wahlberg(マーク・ウォールバーグ)、Kurt Russell(カート・ラッセル)、John Malkovich(ジョン・マルコヴィッチ)、Gina Rodriguez(ジーナ・ロドリゲス)、Dylan O’Brien(ディラン・オブライエン)、Kate Hudson(ケイト・ハドソン)、ほか
  • 配給: KADOKAWA

Deepwater Horizon
バーニング・オーシャン
http://burningocean.jp/

文: 岡山 和正

岡山 和正 (おかやま・かずまさ)

ライター/心理カウンセラー。SOUL SAPIENS | ソウル・サピエンスの映画評「隣の映画観」を連載、心理カウンセラーの視点と新しい切り口から映画作品を分析。カウンセリングにも映画に関する話題を活用している。また、普段から不登校問題の解決や対人関係の改善を中心に幅広い問題や課題の解決に奮闘。日本国ではまだ馴染みが薄いカウンセリングやカウンセラーではあるが、Health(健康)とMental Health(精神的健康)を重要視する海外のように、対人関係や職場環境等の問題を抱える日本国内でも学校や職場におけるカウンセリングを日常化するために挑戦している。情勢や歴史、精神論にも造詣が深い。

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