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特撮美術監督 井上泰幸の“特撮魂”溢れる展覧会が開幕—映画『空の大怪獣 ラドン』セットも登場!特撮にかけた漢の生涯を追う

日本国の宝“特撮”や映像史に大きな足跡を遺した特撮美術監督 故・井上泰幸氏の展覧会が開幕した!どのような展覧会になっているの!?記事を読み進めよう!

 
生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展
井上泰幸監督の愛弟子で特技監督/美術デザイナーの三池敏夫監督が1956年公開の映画『空の大怪獣ラドン』に登場する西鉄福岡駅周辺・岩田屋のミニチュアセットを再現 ©︎ TOHO CO., LTD. ©︎ SAPIENS TODAY and Wingedicate, Photo by Ryohei Ryan Ebuchi
生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展

東宝特撮映画をはじめ多くの特撮映画の背景画を専門に描いてきた“雲の神様”島倉二千六さんと、SAPIENS TODAY|サピエンストゥデイ公式アンバサダーの加藤倖都さん ©︎ SAPIENS TODAY and Wingedicate, Photo by Ryohei Ryan Ebuchi

日本映像史の重要な位置を占め、日本国独自の文化である“特撮”(特殊撮影技術の略称)領域に大きな足跡を遺した特撮美術監督 井上泰幸(1922-2012)の展覧会「生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展」が、2022年3月19日(土曜日)に東京都現代美術館 企画展示室 地下2Fで開幕した。

 

展覧会「生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展」は、ひとりの作家・作り手としての井上泰幸監督とその作品に焦点を当てた、「特撮美術への道—芸術家であり、技術屋」、「円谷英二との仕事—特撮の地位を上げるための献身」、「美術監督・井上泰幸—ミニチュアではなく、本物を作る」、「アルファ企画から未来へ—世の中にないものを作れ」、「井上作品を体感する—岩田屋ミニチュアセットと戦艦三笠3Dデータ」で構成され、井上泰幸監督の学生時代から晩年まで、本物を追求し人生を捧げた特撮美術の仕事を網羅し、各年代ごとの作品に関する資料を追いながら功績と作品の魅力も丁寧に紹介。1954年公開の映画『ゴジラ』、1956年公開の映画『空の大怪獣 ラドン』、1962年公開の映画『キングコング対ゴジラ』、1963年公開の映画『海底軍艦』、1966年放送の特撮テレビドラマシリーズ『ウルトラQ』、1966年公開の映画『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』、1969年公開の映画『日本海大海戦』、1971年公開の映画『ゴジラ対ヘドラ』、1973年公開の映画『日本沈没』、1977年公開の映画『惑星大戦争』、1984年公開の映画『ゴジラ』、1981年公開の映画『連合艦隊』、1987年公開の映画『竹取物語』等の貴重なスケッチ、デザイン画、絵コンテ、台本、制作進行表、記録写真、メイキング映像、撮影で使用したミニチュアやプロップなど、井上泰幸監督が遺し親族に託した約500点の豊富な資料が展示されている。

また、会場入り口では映画監督/特技監督/映像作家の樋口真嗣監督が手掛けたメインヴィジュアルが来館者を迎えるほか、会場の終盤には井上泰幸監督の愛弟子である特技監督/美術デザイナーの三池敏夫監督が再現した、1956年公開の映画『空の大怪獣 ラドン』に登場する西鉄福岡駅周辺・岩田屋のミニチュアセットがお目見え。ミニチュアセットの背景画は“雲の神様”と称される画家の島倉二千六が手掛け、ミニチュアはマーブリングファインアーツが制作し、現在特撮の最前線で活躍する錚々たるクリエイターたちによって井上泰幸監督の綿密な仕事が令和に蘇った。

三池敏夫監督は、井上泰幸監督について「徹底してこだわり、仕事に終わりというものがない人でした。円谷英二さんがその完成度に驚いていたそうです」と話す。再現したミニチュアセットについては「遺されていた当時のロケスケッチや記録写真を見て再現しました。車以外は、すべて手作りです」と明かし、「電線に苦労しました。実際の電線もすべてが真っ直ぐに張られているわけではなく、弛みがあるので、その再現が一番大変でした。電車がある正面から見てもらえると、綺麗に再現されていることがわかります」と苦労した点もあったという。いまはほとんどの撮影でCGが使用され、ミニチュアセットを使った撮影がなくなっていることについて「ミニチュアの方がCGよりはるかに予算が掛かるので、いまはCGが使われていますし、ミニチュアは失敗ができない一発撮りです。(会場で公開されている映画『空の大怪獣 ラドン』特撮名場面ダイジェストを見ながら)当時のスタッフは緊張感があったと思いますよ。ラドンの中に入っている中島春雄さんは、リハか本番かもわからないくらい大変なので、大きな扇風機が回る音がしているから本番なのだろうとおもいっきりやっていたと思いますけど、数千万円のセットを一瞬にして破壊するわけですから」と話し、「ミニチュアを使った実写の良さがあるので、またミニチュアを使った撮影が増えれば」と、再びミニチュアを使った撮影が盛んになることを切望していた。ミニチュアセットは来館者が撮影できるということで、「是非、モノクロで撮影して、展示してある当時のメイキング写真とも見比べてみてください」と、楽しみ方も教えてくれた。

“雲の神様”島倉二千六は、今回の作画について「昔は、東宝スタジオのプールで使う背景を原寸大で描いたりもしたんだけど、今回はキャンバスに描いてそれを拡大したものが背景になっています」と説明し、「筆やエアブラシを使ってアクリル絵の具で4時間くらいで描きました」と明かしたほか、東宝と契約をして仕事をしていた当時を振り返り「東宝とは契約していたんだけど、実は他の映画会社からも依頼があって内緒で仕事をしたこともあったんですよ」と、背景専門の画家として引っ張りだこだった秘話も語ってくれた。会場には、ミニチュアセット背景画の原画も展示され、その隣では原画のメイキング映像も公開されているので、併せてチェックしてほしい。

展覧会「生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展」は、2022年6月19日(日曜日)まで東京・東京都現代美術館 企画展示室 地下2Fで開催。

INFORMATION

 
日程: 2022年3月19日(土曜日)から6月19日(日曜日)
時間: 10時00分から18時00分(展示室入場は閉館の30分前まで)
休館: 月曜日・3月22日 ※ただし3月21日(祝日・月曜日)開館
会場: 東京都現代美術館 企画展示室 地下2F(東京都江東区三好4-1-1(木場公園内))
料金: 予約優先チケット(日付指定券)推奨 一般 1,700円(税込) / 大学生・専門学生・65歳以上 1,200円(税込) / 中学生・高校生 600円(税込) / 小学生以下 無料 / 身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳持参者とその付き添いの方(2名まで) 無料
注意: 小学生以下のお客様は、保護者の同伴が必要です。展示作品・会期・開館時間・休館日等が今後の情勢や諸事情により変更になる場合があります。最新情報は、東京都現代美術館のホームページでご確認ください。
備考: 本展チケットで「MOTコレクション」もご覧いただけます。

 

 

生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展

展覧会「生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展」は、まず故・井上泰幸監督が遺した資料の量とその豊富さに驚く!そして、三池敏夫監督によって再現された1956年公開の映画『空の大怪獣 ラドン』西鉄福岡駅周辺・岩田屋のミニチュアセット、島倉二千六先生が手掛けた背景画、井上泰幸監督が三池敏夫監督やスタッフさんたちと海底火山の爆発を特殊技術で再現する様子を収めた映像などに鳥肌が立つ!観る価値、大いにあり!内覧会に出席したサピエンストゥデイ公式アンバサダーの加藤倖都さんは「井上泰幸展を観させていただき、積み上げた経験や知識、知恵、柔軟な発想で職人さんたちが1から作り上げる特撮の素晴らしさを実感して、好きになりました!まさしく神業ですよね!三池敏夫さんや島倉二千六さんとお会いでき、お話をお聞きできたことも刺激的で貴重な経験と時間になりました」と感想をコメント。三池敏夫監督と島倉二千六先生が、20代の加藤倖都さん・中澤遼さんの質問や話に丁寧に答えてくれている様子にほっこり!世代を超え、次代の若者たちにも日本国の宝“特撮”が語り継がれ、受け継がれてほしい—そんな思いも感じた。

 
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