絵本作家のエリック・カール“絵本の魔術師”が逝去—世界で5,000万部以上売り上げた絵本『はらぺこあおむし』など名作70作以上

1990年 Collection of Eric and Barbara Carle, Courtesy of The Eric Carle Museum of Picture Book Art, Amherst, Massachusetts. © 1969, 1987 Eric Carle.

児童文学作家（絵本作家）/アーティスト/イラストレーターのEric Carle（エリック・カール）が逝去した。

エリック・カールの家族やチームによると、エリック・カールは、アメリカ合衆国現地時間2021年5月23日（日曜日）にアメリカ合衆国マサチューセッツ州ノーサンプトンにある自身のスタジオで、家族に囲まれ見守られながら腎不全で亡くなった。91歳だった。

エリック・カールは、1929年6月25日、アメリカ合衆国ニューヨーク生まれ。少年期は、家族と共にドイツ連邦共和国バーデン＝ヴュルテンベルク州に移住し、自身は絵を学ぶ。1952年にはアメリカ合衆国に戻り、グラフィックデザイナーとして働く。イラストレーターとして絵本制作にも携わり、1967年には絵本『Brown Bear, Brown Bear, What Do You See?』（邦題『くまさん くまさん なにみてるの？』（文：Bill Martin Jr.（ビル・マーチン）））で絵本作家デビュー。1969年刊行の絵本『The Very Hungry Caterpillar』（邦題『はらぺこあおむし』）は、70か国語以上に翻訳、世界で50,000,000部以上を売り上げ、大ヒット。その他にもコラージュ、絵画、紙、布、彫刻など様々な手法で様々な仕掛けを施した作品を発表したほか、舞台美術や立体作品など絵本以外の作品も手掛けた。彼が60年以上に渡って手掛けた作品は70作以上にのぼり、世界で170,000,000部を販売。ここ日本国でも大人気を博している。2002年には、アメリカ合衆国初の絵本専門美術館 Eric Carle Museum of Picture Book Art（エリック・カール絵本美術館）をマサチューセッツ州アーマストに共同で創設・開館し、自身の作品はもちろん、他の絵本作家の作品も紹介している。2003年には、Laura Ingalls Wilder Award / Children’s Literature Legacy Award（ローラインガルスワイルダー賞（現・児童文学遺産賞））を受賞し、Williams College（ウィリアムズ大学）やAmherst College（アマースト大学）を含む8つの名誉学位を取得。来日は、2017年が最後。2020年6月から2021年3月には、エリック・カール絵本美術館と共同で東京・PLAY! MUSEUMの開館記念展『エリック・カール 遊ぶための本』が企画・開催され、連日多くの来場者で賑わった。

晩年に描かれた最後のドローイングシリーズには、“50¢”と描かれた作品が含まれており、エリック・カールはこの意味を「子どもたちは自分たちも自分の作品を売ることができることを知っておくべきである」と語り、子どもたちに自分たちの周りの世界について学び、アーティストとして参加するように促し、表現したという。エリック・カール絵本美術館は、「In the light of the moon, holding on to a good star, a painter of rainbows is now traveling across the night sky」と題してエリック・カールの訃報を伝えている。