恐竜の進化に迫る特別展「恐竜博2023」が国立科学博物館で開催—生物多様性を減らさないこと、人間を含む地球の未来のために
“攻・守”をテーマに恐竜の進化に迫る特別展「恐竜博2023」が国立科学博物館で開催されている!どのような恐竜博になっているの!?記事を読み進めよう!
特別展「恐竜博 2023」が、2023年3月14日(火曜日)に東京・国立科学博物館で開幕し、連日多くの来場者で賑わいを見せている。
本展は、2019年にデイノケイルスとむかわ竜の全身復元骨格を世界で初めて公開した特別展「恐竜博 2019」以来約3年半ぶりに開催。恐竜の「攻・守」をテーマに、第1章「装盾類の進化」、第2章「鎧竜ズールのすべて」、第3章「北半球における獣脚類の進化」、第4章「南半球における獣脚類の進化」、第5章「絶滅の最新研究」で構成され、恐竜の進化に迫る。“守”を代表して展示される、鎧竜史上最高の完全度と謳われるカナダ・Royal Ontario Museum(ロイヤルオンタリオ博物館)所蔵のズール・クルリヴァスタトル(アンキロサウルス科)の体骨格の実物化石は、館外および日本国では初めての公開となる。“攻”を代表してズール・クルリヴァスタトルと同じ時代に生きたゴルゴサウルス・リブラトゥス(ティラノサウルス科)の全身骨格(複製)をズール・クルリヴァスタトルの全身骨格(複製)と対峙するように展示。さらに、アメリカ合衆国モンタナ州に分布するヘルクリーク層から発見された頭部の一部(前関節骨)や、胸の叉骨、前あしの上腕骨、脊椎骨、腹肋骨など、ティラノサウルス・レックスの中でも発見例が少ない部位の実物化石を使って組み立てられたティラノサウルス・レックス(ティラノサウルス科)“Tyson(タイソン)”の全身骨格が世界で初めて公開されているほか、2020年に国立科学博物館とアルゼンチン共和国・Museo Argentino de Ciencias Naturales(アルゼンチン自然科学博物館)の共同調査チームが発掘し、昨年2022年にメガラプトル類の新種であることが発表された大型肉食恐竜マイプ・マクロソラックス(メガラプトル科)の実物化石なども展示されている。身を守るためにトゲやプレートを進化させた装盾類(剣竜と鎧竜の総称)の進化から、絶滅に関する最新研究までが解説され、「攻・守」から恐竜の進化を読み解きなおし、恐竜学・古生物学の最前線を知ることができる。
本展の目玉展示の1つであるズール・クルリヴァスタトルの公開について、本展の開催に合わせて来日したロイヤルオンタリオ博物館 副館長/展示企画・展覧会担当のMaria Piacente(マリア・ピアチェンテ)は、「今回の展覧会の中でも最も魅力的なのが、私たちが誇っている“ズール”です。最も完全な鎧竜の標本で、今から7600万年前に地球を歩いていた生きものです。ご覧いただければおわかりの通り、稀に美しい完全な標本ですので、国立科学博物館さんから貸してほしいとのご相談があったときは正直心配しましたが、素晴らしい発見と標本をみなさんに観ていただき、理解していただくことが大切であると認識しまして、カナダ以外では世界で初めて展示させていただく運びとなりました」と説明。本展を監修した国立科学博物館 副館長の真鍋真博士は、「「恐竜博2023」を企画するまでは、鎧竜は体のまわりに鎧がついている比較的丈夫な化石なので、良い標本がたくさんあるのではないかなと思っていたのですが、頭から棍棒まで一体が見つかっているのはこの“ズール”が初めてでした。死んでからバラバラになった断片的な化石を復元するのに、この“ズール”をお手本にして研究するということが行われている重要な標本です」と説明した。
ここで特別展「恐竜博 2023」の全貌と見どころを、資料画像を交えてご紹介する。
第1章 装盾類の進化
第1章「装盾類の進化」では、本展で紹介する恐竜の系統樹をはじめ、アシリサウルスやエオドロマエウス、エオラプトル、ヘテロドントサウルス、スクテロサウルス、スケリドサウルス、ヘスペロサウルス、タラルルス、アニマンタルクスの全身骨格(複製)、エドモントニアの頭骨の実物化石、プエルタサウルスの第9頸椎・第2胴椎(複製)、卵・卵殻の実物化石などが公開され、恐竜の起源や鳥盤類の起源の新説などに触れながら装盾類の進化について解説している。
まず鎧竜がどのように進化してきたのか——いまから2億3000万年くらい前の三畳紀、最初の恐竜は、肉食恐竜だったと考えられ、全長1mくらいの小さな生きものでした。それまでの爬虫類がガニ股腕立て伏せで、あまり機敏に動けなかったと考えられていますが、恐竜は二足歩行になり、早く獲物に追いつける、早く敵から逃げることが有利になったことで、どんどん勢力を伸ばし、多様性を広げていきます。そんな中で戦わずして得ることができる植物を食べる恐竜も現れます。そうすると、恐竜の中で捕食する・捕食される、攻める・守るような新しい関係が生まれました。いまからおよそ2億年前の三畳紀からジュラ紀にかけて現れたのが鎧竜です。最近は、鎧竜を含めた植物食の鳥盤類の起源や初期進化が、“これまで教科書に書かれていたようなこととは違うらしい”ということがわかり、注目されている分野です。小さな恐竜から少しずつ鎧を持つようになり、ジュラ紀になると、背中に板があり、尾にトゲがあるステゴサウルス類(剣竜)が最初に繁栄しますが、なぜか白亜紀に入るとステゴサウルス類は絶滅してしまい、鎧竜が現れます。鎧竜の中には、尾に棍棒がついていないグループもいれば、棍棒がついているグループもいます。
特別展「恐竜博2023」も世界初・日本国初公開の化石や全身骨格が展示され、予想以上に見応えがあり、恐竜の進化から絶滅、そして多様性までを学ぶことができる。現代の人間社会では、さまざまなところで多様性と包括性の重要性が叫ばれてはいるものの、“自分が正しい”“自分が偉い”“自分が一番”という“自分至上主義”、さらには人種差別やLGBTQI+差別、排他的・不寛容な空気も蔓延り、なかなか進歩していないのが現実。しかし、恐竜の進化・絶滅・多様性とその史実から、人間を含む生物多様性の重要・必要性を知り、学ぶことができる本展は、画期的である。太古の地球に生きた恐竜の貴重な実物化石や骨格標本をいま私たちが観ることができるのは、発掘や研究に携わる人々の努力の賜物であることと、彼らへの感謝も忘れてはならない。本展の内覧会に出席したSAPIENS TODAY|サピエンストゥデイ公式アンバサダーの戸井田晃典さん(俳優)は、「「いまは第6の大量絶滅の時期にきている」と言う真鍋先生のお話と、本展終盤にある人間の乱獲などによって絶滅してしまったドードーが自分の中でリンクしたことです。恐竜の化石や、テレビ・映画で恐竜を見たことがあっても、どこか“昔の話”として片付けていた部分がありましたが、真鍋先生のお話をお聞きして本展を観ることで“実際に存在した生き物”という認識に変わりました。自然の摂理の中に種の競争や絶滅が存在することはごく自然なことだとは思いますが、人間の手で他の種や生物の絶滅を早めては絶対にいけないのだと思いましたし、生物多様性の重要性も学ぶことができました。賀来賢人さんが登場したオープニングを見学させていただいたことも貴重な体験でした。賀来賢人さんの音声ガイドを聴きながら展示を観ることで、一緒に回っているような気持ちになって楽しかったです!とにかく声が良い!僕の質問に丁寧に答えて教えてくださった真鍋先生、ありがとうございました!」と感想を寄せた。追加情報として、イタリア共和国以外では世界初、日本国初公開となる“奇跡の赤ちゃん恐竜”スキピオニクスの実物化石が来日し、3月24日(金曜日)から本展で公開!この貴重な機会を見逃すな!