世界を掴んだディズニー・オフィシャル・アーティスト:カズ・オオモリの才能と信用―インタビュー

 
© 2017 So Mishima

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江渕良平: アメリカ合衆国滞在時に手掛けたお仕事で一番大きな仕事は何ですか。

Kaz Oomori: インハウスでお仕事をしていたときに手掛けたメジャーなアートワークは、Levi’s(リーバイス)の新聞広告やHallmark(ホールマーク)のグリーティングカードのイラストレーションです。でも、これもそんなに個性のある仕事ではなかったんです。

江渕良平: 個性をどんどん出していきたいという気持ちは次第に強くなっていきましたか。

Kaz Oomori: もちろんです。アメリカに来ているということ自体、オリジナルのイラストレーションを確立させていくというのが、一つの目的だったので、色んな勉強をしましたよ。

江渕良平: 例えばどんな勉強をされたんでしょうか。

Kaz Oomori: The Minneapolis College of Art and Design, MCAD(ミネアポリス・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザイン)でのユニークな授業があるんですが、3つ好きなものを持って来いと言うんですよ。何でも良いんです。あるクラスメイトは、おばあちゃんを連れてきましたし、モーターバイクを持ってきたクラスメイトもいましたし、持ってこれない場合は写真でも良いんです。何でも良いので、僕も色々なものを持っていきました。そして、何でそれが好きかやその持ってきたものの共通点をプレゼンテーションしなければいけないんです。僕が持っていったものの共通点を見たときに、偶然に全てが赤色でした。教授に「君は赤いものが好きなんだよ」「クラシカルなものが好きなんだよ」「スピード感があるものが好きなんだよ」と分析されるんです。この発想法は面白いと思ったので、自分のオリジナルを確立をさせるために、まずは好きなイラストレーターの作品やイラストレーションのスタイルを3つ探してきて、それを自分なりにミックスして描いていきました。例えば、白熊を描くとします。そのときに、好きなイラストレーター3人のそれぞれの配色、シルエット、レイアウト、画材などでやるとどうなるかという色んなパターンを繰り返して、それを講師に見ていただきました。研究と分析を繰り返した形ですね。研究と分析の仕方を得られたのが、大きかったのかなと思います。

江渕良平: Kazさんの作品を見ていると赤色が普通の赤とは違いますよね。ちょっと濃いというか、アメリカンというか、それがすごく印象的でした。

Kaz Oomori: 凄いですね、それ。ありがとうございます。そうなんですよね、アメリカのクラシックな感じなんですよね。

江渕良平: 赤色やクラシックな感じというのは、アメリカ合衆国にいるときに、それともその前から好きという感じだったんですか。

Kaz Oomori: アメリカに行く前からあったと思います。いま思い出すと、“コカ・コーラ”です。子どもの頃から欧米、特にアメリカのエンターテイメントが好きというのもありましたし、アメリカっぽい“コカ・コーラ”のロゴと色が好きでした。工業高校に通っていたおじさんの家に遊びに行ったときに、おじさんが課題で模写したコカ・コーラのロゴが貼ってあったんですね。それを見たときに街の中のビルボードなどで見る“コカ・コーラ”ではなく、ポスターカラーで描いたような色が気になったので、おじさんに聞いたらポスターカラーで描いたとのことでした。ポスターカーラーで描けるんだ!?と思いましたし、視覚的に自分がほしいなと思うものは自分で再現することができるんだということも含めて、赤色やアメリカらしさも刷り込まれていたようにも思います。

 
江渕良平: もしかしてクリスマスやサンタクロースも好きですか!?サンタクロースの赤い衣装は、“コカ・コーラ”の赤からきていますよね。

Kaz Oomori: 大好きです。昔の“コカ・コーラ”のクリスマス・キャンペーンのアートワークやサンタクロースのイラストレーションが大好きです。あのアンティークな感じがたまりませんね。

江渕良平: アメリカ合衆国でイラストレーターとしての経験を経て、日本国に帰国されます。日本国に帰国してからは、どんなお仕事をされたんですか。

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Kaz Oomori: 色々なお仕事をさせていただきました。エンターテイメント関連のお仕事ですと、ユー・エス・ジェイ/ユニバーサル・スタジオ・ジャパン™さんです。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン™がオープンした当時のリーフレットの表紙も手掛けました。当時、まだユニバーサル・スタジオ・ジャパン™がオープンしていない時期で半年後にオープンするということだったので、いまこそメジャーになりましたが、ゲートやグローブも当然できていない状況です。そんな中、図面と素材の資料だけが送られてきて、おそらく完成はこんな感じだろうというのをエアブラシを使って超リアルな絵で描きました。後、ユー・エス・ジェイ/ユニバーサル・スタジオ・ジャパン™さんですと、The Amazing Adventures of Spider-Man – The Ride(アメージング・アドベンチャー・オブ・スパイダーマン・ザ・ライド)の建物にある看板のポージングの原案をデザインしました。(写真中のブックの右に描かれているデザイン)これは看板の最終アートワークを提出するのではなく、あくまでもSpider-Man(スパイダーマン)のポージングの原案のデザインです。この原案を元にMarvel(マーベル)のアーティストがイラストレーションを描いて看板になりました。Spider-Man(スパイダーマン)と言えば、このポージング!というのはあるので。他にも中田英寿さんの写真集のイラストレーションを手掛けたり、映画雑誌『ROADSHOW』(ロードショー)や映画雑誌『PREMIERE』(プレミア)でイラストレーションの連載をしたりしていました。

江渕良平: ユー・エス・ジェイ/ユニバーサル・スタジオ・ジャパン™さん関連のアートワークを手掛けていたというのは驚きです!映画雑誌『ROADSHOW』(ロードショー)や映画雑誌『PREMIERE』(プレミア)は、どれくらいの期間、連載をされていたんですか。

Kaz Oomori: 4年くらいですね。これには面白いエピソードがあるんですけど、もうぼちぼち原稿がメールで送られて来る頃かなと思ったときに来なかったんですよ。編集部に電話をしたら・・・映画ライター2人の対談形式のコラムに僕のイラストレーションも掲載されていたのですが、ちょうど映画『The Lord of the Rings: The Fellowship of the Ring』(邦題:ロード・オブ・ザ・リング)の制作中で特集を組むためにどちらかのライターが現地取材をすることになったらしいのですが、どちらが行くかで大喧嘩になったそうなんです。それが原因で、コラムの連載がなくなってしまい、僕のレギュラーの仕事もなくなりました。(笑)すごく楽しい仕事だったのですが・・・。

江渕良平: 最悪ですね・・・。映画、特に洋画を取り巻く人たちにありがちというか・・・私も現場にいてよくわかりますが、特に日本国では、映画、特に洋画を取り巻くヒト=映画系のジャーナリストやライター、ニュース・情報配信者、配給・宣伝担当者の一部には嫉妬深い人やネチネチした人も多く見られますし、自分の好きな作品や出演者、キャラクターを自分のものだけにしたがる勘違いした人も多くいます。映画もしかりですが、エンターテイメントは、誰のものでもない、全てのヒトのためのものなのに。作品を色んなアプローチの方法で宣伝してヒットさせなければいけない配給や宣伝の担当者の中にもコントロールや管理という名目で我が物にしている人もいますし、作品そのものや作品に全く関係のない芸能人・インスタグラマーに頼っている場合も・・・閉鎖的、排他的なので、マーケティングができていない、マーケティングになっていないんですよね。日本国の洋画を取り巻く環境は、一般や消費者にも見えてしまっていて、国内での興行収入が伸びない要因の一つにもなっています。誰かが気付いて環境や関係者の考え方を変えなければいけないと思いますよ。そういう中での仕事は大変ですよね。
江渕良平: Kazさんが所属されているPoster Posse(ポスターポッセ)というエージェンシーについてお聞きしたいのですが、Poster Posse(ポスターポッセ)にはアメリカ合衆国滞在中に所属されたんですか。

Kaz Oomori: その頃はまだ所属していませんでした。いまから5、6年前、僕のポートフォリオを掲載しているウェブサイトを見たポップカルチャーやギークアートを紹介しているフランスの「GEEK-ART」(ギーク-アート)というウェブサイトを運営している方から日本のエンターテイメントやオタク文化に興味があるとのことで連絡があり、その後、ポスターアートを制作してみないかということで機会をいただきました。それが映画『Hellboy』(邦題:ヘルボーイ)のポスターアートとグラフィックを手掛ける機会になり、そのポスターが「GEEK-ART」(ギーク-アート)のウェブサイトで販売されました。

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