特別展『国宝 鳥獣戯画のすべて』が東京国立博物館で開幕—鳥獣人物戯画全4巻全場面44メートル超と名刹 高山寺の名宝を一挙公開

国宝 鳥獣人物戯画は、伝来する過程で原本から一部が切り離され、一場面ごとの掛け軸になった断簡が確認されている。また、原本の巻物から一部が切り離されたり、切り離されて順番を入れ替えられたりする過程で失われた場面があることも、原本を写し留めていた模本作品から判明している。本展では、原本だけではなく、断簡、そして、国内外に散らばった模本作品が一堂に会していることで、かつて存在していた鳥獣人物戯画の現存する全場面“すべて”を鑑賞することができるまたとない機会になっているのだ。

重要文化財 明恵上人坐像

重要文化財 明恵上人坐像／鎌倉時代・13世紀／京都・高山寺蔵／通期 ©︎ SAPIENS TODAY and Wingedicate, Photo by Ryohei Ryan Ebuchi

国宝 鳥獣人物戯画が伝わる京都・世界遺産 栂尾山 高山寺は、東大寺で華厳を学び、勧修寺の興然から密教の伝授を受けた明恵上人が、鎌倉時代初期に後鳥羽上皇より栂尾の地（寺域）を賜り、華厳宗の道場として高山寺を再興した。普段は高山寺の開山堂に安置されている非公開の秘仏・重要文化財 明恵上人坐像がお出ましになり、28年ぶりに寺外での公開となった。肉身や衣の色彩も鮮明に残っているほか、修行のために紀州で切ったとされる右耳も表現されている。重要文化財 明恵上人坐像は、高山寺の後山・楞伽山の縄床樹に座る明恵上人を描いた国宝 明恵上人樹上坐禅像をイメージした空間に展示され、対角線上には、明恵上人が生涯にわたって密接な関わりを持っていた母ゆかりの地にある浄教寺が所蔵する重要文化財 大日如来坐像が見守る。

明恵上人ゆかりの寺宝

重要文化財 子犬／鎌倉時代・13世紀／京都・高山寺蔵／通期 ©︎ SAPIENS TODAY and Wingedicate, Photo by Ryohei Ryan Ebuchi

龍子、包紙、小箱／京都・高山寺蔵／通期 ©︎ SAPIENS TODAY and Wingedicate, Photo by Ryohei Ryan Ebuchi

高山寺には、国宝 鳥獣人物戯画をはじめ、国宝・重要文化財に指定されている多くの寺宝が伝わり、本展では明恵上人ゆかりの名宝も公開されている。首を傾け、つぶらな瞳で見つめる子犬の像は、明恵上人が手元に置いて愛玩したと伝えられている。綺麗な形を保持した大きさの異なる三体の乾燥した龍子（タツノオトシゴ）と包紙、小箱は、明恵上人が所持していたと言われ、異国への憧れを伝える品とされる。