トンコハウス・堤大介の「ONI展」がPLAY! MUSEUMで開幕—空間演出で物語や空気感、光と闇、音を体感する新感覚展覧会
長編アニメーション『ONI ~ 神々山のおなり』を体感できる展覧会がPLAY! MUSEUMで開幕した!どのような展覧会になっているの!?記事を読み進めよう!
長編アニメーション『ONI: Thunder God’s Tale』(邦題『ONI ~ 神々山のおなり』)を体感できるトンコハウス・堤大介の「ONI展」が、2023年1月21日(土曜日)に東京・立川 PLAY! MUSEUMで開幕した。
本展の開幕に先駆けて内覧会が開催され、主催者でもあるPLAY! プロデューサー/ブルーシープ 代表の草刈大介は、本展の狙いについて「映像の美しさ、キャラクターのかわいさ、「かっぱ」というすごく良いキャラクターがいたり、堤さんのパーソナルな部分を含めた思いが込められている鬼(ONI)という題材があったり、そういった色々なことが含まれている映像を展覧会として見ていくというのは、素晴らしく素敵なことです。展覧会として如何に映像と違うようにしていくか——映像が元の作品ではありますが、映像ではなく、スクリーンやタブレット、スマートフォンではなく、(違った)楽しみのあり方はどうなのだろうかというのを大きな目標としてやってきました。映像は、でき上がったものがすべてだと思うんですよね。今回、僕らが展覧会としてやろうと思っていることは、映像の見方・体験の仕方をそもそも変えちゃうというような——伝えたいということは同じ目標ではありますが、違うアプローチをとったことはけっこう大胆なことだと思っています。堤さんに相談したところ、堤さんが少し考えて「すごく面白そうだ」と——できたばかりの作品がありながら、違う見せ方に対して興味を抱くというのはすごいことだなと、僕は感動、感激しました。それがすごく特別なことなんだということを皆さんにも感じていただけたら嬉しいなと思いました」と説明。アニメーション監督の堤大介監督は、本作について「僕はもうアメリカに30年くらい住んで、日本人として、外国人としてやっています。自分が自分の作品を作るときに、日本を題材にしたものを世界に発信したいというのをずっと昔から思っていて、チャンスがきた時にこの『ONI』という作品をつくらせてもらいました。日本人には馴染み深い鬼というテーマは、掘り下げていくと、日本人とは違う容姿だったり、体が大きかったり、毛むくじゃらだったりした昔日本に住んでいた外国人や昔から住んでいた原住民の人たちを鬼と呼んだという説もあります。それを聞いて、自分たちとは違うもの、自分たちとは違う文化を持ったもの、そういう人たちを恐れて鬼と呼んだんじゃないか——このテーマは、まさにいまの時代にぴったりだなと思い、世界中の人にこのコンセプトを見てもらいたいというところからこのプロジェクトはスタートしています」と、世界に向けてメッセージを込めた作品であることを説明。本展については「いまの時代は、Netflixだけではなく、ストリーミングで自分の家でテレビやiPad、人によっては携帯電話でコンテンツが見られる時代です。その時代に、この自分たちの映像がまったく違う形で体感できるというのはすごいと思います。映画館から人が離れている時代に、コンテンツを携帯や自分の家だけではない見方、画面上だけじゃないところでも体験できるというのはすごく素敵なコンセプトです。もっともっとこれから増えたらいいなと思います」と、PLAY! MUSEUMが提案する新しい体験型アニメーション展のコンセプトを高く評価した。
本展は、来場者が映像をひとつのスクリーンの前で座って見る鑑賞スタイルではなく、複数の壁面や特製の手漉き和紙スクリーンに投影される全4話・154分のアニメーションとその映像美を歩いて・立ち止まって体感することができ、主人公の少女「おなり」と「なりどん」がたわむれるあたたかな光や美しい自然描写、憧れの雷神と空を浮遊する雷雲のシーン、「おなり」が人間社会と迷いの森をさまようシーン、「おなり」と仲間たちが勇気を出してONIに立ち向かうクライマックスシーンなどが会場全体を包み、光と色、自然を感じる音響で味わうことができる空間になっている。また、和紙と竹ひごでつくられた提灯があちこちを照らし、物語に出てくる戻り橋や祭りやぐらが再現展示されているほか、国内有数の民俗資料コレクションを所蔵する武蔵野美術大学 美術館・図書館 民俗資料室の協力を得て、日本全国から蒐集された貴重な鬼や妖怪のお面、大きな凧などが随所に展示され、日本国の古き良きものづくりや質感と作品の映像美とが渾然一体となり、まるで作品の世界へトリップしたような没入体験をすることができる。さらに長編アニメーション『ONI ~ 神々山のおなり』のストーリーが生まれるきっかけから完成まで、本格3DCGアニメーションが生み出される制作過程も紹介。初期にパイロット版のためにドワーフが制作したコマ撮り用の人形やスタジオセット、多彩なキャラクターや豊かな世界観を描いたスケッチ、カラースクリプトやライティングなどの資料も展示され、トンコハウスの映像づくりを垣間見ることができる。DRAWING AND MANUALを率いる映像作家/写真家の菱川勢一が空間デザインを担当し、終盤では本展のクライマックスを飾る光のインスタレーションを演出。ONIの力に恐れることなく、立ち向かう「どんつこつこつこ、わっしょい!わっしょい!」の心を持って手や設置されている太鼓を叩くと、無数のモリノコが発光し、有機的に空間を巡る美しいインスタレーションが生まれる。
ここで、トンコハウス・堤大介の「ONI展」の全貌と見どころをご紹介する。
Tonko House|トンコハウス
Pixar Animation Studios(ピクサー・アニメーション・スタジオ)でアートディレクターを務めていた堤大介とRobert Kondo(ロバート・コンドウ)が休暇をとって制作し共同監督を務めた短編アニメーション映画『The Dam Keeper』(邦題『ダム・キーパー』)がきっかけとなり、2014年7月にピクサー・アニメーション・スタジオを離れ、サンフランシスコ州バークレーでTonko House(トンコハウス)を共同設立。『ダム・キーパー』は、2015年に第87回アカデミー賞短編アニメーション賞にノミネートされたほか、世界各地で25の賞を受賞、75の映画祭で上映された。
2016年制作の短編アニメーション映画『Moom』(『ムーム』)は世界8ヵ国の映画祭で24の賞を受賞。2016年までピクサー・アニメーション・スタジオでアニメーターを務めたアニメーション映画製作者/アニメーション監督/アニメーターのErick Oh(エリック・オー)がトンコハウスのメンバーに加わり、2007年に制作したアニメシリーズ『PIG: The Dam Keeper Poems』(邦題『ピッグ – 丘の上のダム・キーパー』)が日本国のHuluで配信、配信後にNHKでも放送され、人気を博す。2019年からは石川県金沢市にもスタジオを構え、日本国とアメリカ合衆国の2拠点で作品を制作している。独自性と革新性、ハリウッドレベルの技術力や芸術性から、CGやアニメーション関係者、アート、音楽、映画、広告、マスコミ、教育など、クリエイティブに関わらず他分野の専門家にもファンが多い。
PLAY! MUSEUMが提案する新しい形の展覧会、長編アニメーション『ONI ~ 神々山のおなり』を体感できるトンコハウス・堤大介の「ONI展」。ものづくり・手づくり感も感じることができる温かみのある空間と演出の中で、『ONI ~ 神々山のおなり』のテーマとなっている”自然”、“光と闇”、“鬼(ONI)とは?”を感じ、考えることができる。内覧会に出席し体験したSAPIENS TODAY|サピエンストゥデイ公式アンバサダーの石森祐矢さんは、「自宅やスマフォ、タブレット、インターネット上では味わえない、特製手漉き和紙に投影された綺麗な映像、会場に響く音、雰囲気を高める照明、日本全国から集められた貴重な鬼・天狗のお面や凧、さらには本展のために再現された戻り橋や祭りやぐらなどの空間演出によって『ONI ~ 神々山のおなり』の世界観が見事に作られ、作品の中に入り込んだかのような感覚になり、“鬼(ONI)”を感じ、“鬼(ONI)とは?”を考えやすかったです。メイキングの貴重な資料も必見です!」と感想をコメント。近日、今年2023年から新たにスタートしたプロジェクトの第1弾として、堤大介監督にフォーカスしたポートレート写真とインタビューも掲載予定!お楽しみに!