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恐竜の進化に迫る特別展「恐竜博2023」が国立科学博物館で開催—生物多様性を減らさないこと、人間を含む地球の未来のために

“攻・守”をテーマに恐竜の進化に迫る特別展「恐竜博2023」が国立科学博物館で開催されている!どのような恐竜博になっているの!?記事を読み進めよう!

 
特別展『恐竜博2023』
日本国初公開となるズール・クルリヴァスタトルの全身骨格とゴルゴサウルス・リブラトゥスの全身骨格(複製・ロイヤルオンタリオ博物館所蔵) ©︎ SAPIENS TODAY and Wingedicate, Photo by Ryohei Ryan Ebuchi

ロイヤルオンタリオ博物館によるズール・クルリヴァスタトルの復元図だが、実際はまだ肌の色や模様等はわかっていない。今後の研究で化石にメラニン色素等が残っていれば、どのような色だったのか、どのような模様だったのかもわかってくるという。

恐竜博 2023

ゴルゴサウルス・リブラトゥスの頭骨化石(実物化石・ロイヤルオンタリオ博物館所蔵) ©︎ SAPIENS TODAY and Wingedicate, Photo by Ryohei Ryan Ebuchi

ゴルゴサウルス・リブラトゥスは推定全長約9m、良好な保存状態の頭骨の実物化石はカナダ アルバータ州の7700万年から7600年前のダイナソーパーク層から発見された。

真鍋真博士による解説

“ズール”は、尾に棍棒がついており、鎧竜の化石の中では一番完全度が高く、比較研究などの教科書的な役割を果たしています。“ズール”の名前は、1984年公開の映画『Ghostbusters』(邦題『ゴーストバスターズ』)に登場する門の神“Zuul(ズール)”から付けられました。ロイヤルオンタリオ博物館の研究員が毎日“ズール”の顔(頭骨)と見つめ合っていると、なんとなく“映画『ゴーストバスターズ』のズールに似てない?”ということになり、これを学名にしてしまおうと、ハリウッドのプロダクションに交渉し、名前を使わせてもらえるようになりました。下の種小名“クルリヴァスタトル”の“クルリ”は脛、“ヴァスタトル”は破壊するという意味です。“ズール”と同じ時代に生きたゴルゴサウルス・リブラトゥスの脛のあたりが骨折している化石がさまざまなところで見つかっていることから、状況証拠ではありますが、鎧竜が尾を振り回すことで怪我をさせたかもしれないということで“脛を破壊する”という種小名がつけられました。頭から首にかけても鎧があり、首を噛まれにくくなっているのもご覧いただけると思います。化石の保存状態が良いので、体全体のトゲトゲしている先端部分も残っています。トゲトゲしている鎧の部分は硬いので化石として残りやすいのですが、間を埋める皮膚の部分は柔らかいので腐ると、残りの部分もバラバラになり、どのように鎧が体のまわりを覆っていたのかもわからなくなってしまいます。この“ズール”が発見されたおかげで、背中側と脇腹側の鎧の形や大きさが違うということもわかりました。尾から棍棒にいたるところに細い鉛筆くらいの太さの長い構造の束をご覧いただけると思いますが、私たち人間のアキレス腱のような腱が骨成分になって硬くなり、これが尾を包んでいることで、尾を大きく振り回しても捩れて折れる危険性がないようになっています。今年2月に新しい論文が発表されまして、脇腹にあるトゲトゲの先が折れており、折れ口の骨が再生して治ろうとしています。脇腹のところしか折れていないというところから、同じ仲間の中で縄張り争いをするときに棍棒を振り回していたのではないか、棍棒は肉食恐竜に対してだけではなく、仲間の中でも争いがあり、攻防に使われたのではないかということも垣間見ることができます。実は、日本でも鎧竜の化石が見つかっています。北海道では後頭部の化石、福井県では歯や足跡の化石、兵庫県と長崎県では歯の化石、富山県では足跡の化石が見つかっています。


 

POINT

Royal Ontario Museum|ロイヤルオンタリオ博物館

ロイヤルオンタリオ博物館外観 ©Royal Ontario Museum

Royal Ontario Museum(ロイヤルオンタリオ博物館)は、1914年に開館し、北米の文化施設のトップ10に入る、カナダで最大かつ最も総合的な博物館。1300万点を超えるトップクラスの美術品や自然史標本が収蔵されており、40のギャラリーや展示スペースで紹介。同館は、恐竜をはじめ化石発掘の野外調査を実施する屈指の研究機関として、またコレクションに基づく博物館研究の国際的リーダーとして、芸術、文化、自然界に対する我々の理解を深めるために極めて重要な役割を果たしている。100年以上にわたり行われている古生物学の野外調査で世界的に重要な恐竜やその他の化石のコレクションを収集、収蔵し、その成果は世界最高水準の古生物学ギャラリーで見ることができる。

Triceratopsケラトプス科の未記載種

恐竜博 2023

ケラトプス科 未記載種の全身骨格(複製・国立科学博物館所蔵)と全身骨格(実物化石・国立科学博物館所蔵)/資料画像 撮影 アフロ ©︎ SAPIENS TODAY and Wingedicate, Photo by Ryohei Ryan Ebuchi

国立科学博物館と東京大学大学院が共同で研究している名前のついていない角竜類ケラトプス科の未記載種の全身骨格の実物化石と全身骨格(複製)も公開されている。ケラトプス科の未記載種は推定全長約3.5m、全身骨格の実物化石はアメリカ合衆国モンタナ州のジュディスリバー層から発見された。

 

特別展「恐竜博 2023」
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特別展「恐竜博2023」も世界初・日本国初公開の化石や全身骨格が展示され、予想以上に見応えがあり、恐竜の進化から絶滅、そして多様性までを学ぶことができる。現代の人間社会では、さまざまなところで多様性と包括性の重要性が叫ばれてはいるものの、“自分が正しい”“自分が偉い”“自分が一番”という“自分至上主義”、さらには人種差別やLGBTQI+差別、排他的・不寛容な空気も蔓延り、なかなか進歩していないのが現実。しかし、恐竜の進化・絶滅・多様性とその史実から、人間を含む生物多様性の重要・必要性を知り、学ぶことができる本展は、画期的である。太古の地球に生きた恐竜の貴重な実物化石や骨格標本をいま私たちが観ることができるのは、発掘や研究に携わる人々の努力の賜物であることと、彼らへの感謝も忘れてはならない。本展の内覧会に出席したSAPIENS TODAY|サピエンストゥデイ公式アンバサダーの戸井田晃典さん(俳優)は、「「いまは第6の大量絶滅の時期にきている」と言う真鍋先生のお話と、本展終盤にある人間の乱獲などによって絶滅してしまったドードーが自分の中でリンクしたことです。恐竜の化石や、テレビ・映画で恐竜を見たことがあっても、どこか“昔の話”として片付けていた部分がありましたが、真鍋先生のお話をお聞きして本展を観ることで“実際に存在した生き物”という認識に変わりました。自然の摂理の中に種の競争や絶滅が存在することはごく自然なことだとは思いますが、人間の手で他の種や生物の絶滅を早めては絶対にいけないのだと思いましたし、生物多様性の重要性も学ぶことができました。賀来賢人さんが登場したオープニングを見学させていただいたことも貴重な体験でした。賀来賢人さんの音声ガイドを聴きながら展示を観ることで、一緒に回っているような気持ちになって楽しかったです!とにかく声が良い!僕の質問に丁寧に答えて教えてくださった真鍋先生、ありがとうございました!」と感想を寄せた。追加情報として、イタリア共和国以外では世界初、日本国初公開となる“奇跡の赤ちゃん恐竜”スキピオニクスの実物化石が来日し、3月24日(金曜日)から本展で公開!この貴重な機会を見逃すな!

 
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